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遺言書の前にエンディングノート!専門家が勧める理由とは

「終活」では遺言書より先にエンディングノートを書いて欲しいものです。
と言うのも、今の時代、人は簡単には死ねず、死の前に病気や介護の問題が先にやってくるからです。あなたが意識を失ったときや認知症になったとき、延命治療や介護の方針について、すべてのことを子供たちの判断に委ねることは、かなりの負担であるということをご存じでしょうか?

エンディングノートと遺言書の根本的な違い

終活を始めようと思ったとき、多くの人が「遺言書を書かなければ」と考えます。しかし、実は遺言書よりも先にエンディングノートから始めることを強くお勧めします。

ある60代の女性が脳梗塞で突然倒れ、意識が戻らない状態になりました。医師から「延命治療をどうするか」と尋ねられた子供たちは、母親の希望を全く知らず、深く悩みました。「管につながれたまま生きることを望んでいたのか」「苦しませているのではないか」。答えのない問いに家族は苦しみ、最後まで「本当にこれで良かったのか」という後悔が残りました。

エンディングノートとは、こうした場面で家族を救う記録です。医療や介護の希望、財産のこと、葬儀の希望、家族へのメッセージなど、人生の終わりに関わるあらゆる事柄を自由に書き留められます。市販のものもあれば、自分でノートを作ることもできます。

一方、遺言書は法律で定められた厳格な書類です。財産の分配方法を指定し、法的効力を持つため、書き方に細かいルールがあります。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、それぞれ作成要件が定められています。形式を間違えると無効になる可能性もあります。

この2つの最も大きな違いは法的効力の有無です。遺言書は法的に効力を持ち、相続において優先されますが、エンディングノートには法的効力がありません。エンディングノートに「財産は長男に全て渡す」と書いても、法的には何の拘束力もないのです。

ではなぜエンディングノートが先に必要なのでしょうか。
それは遺言書では書けない、しかし家族が最も困る情報を残せるからです。遺言書は財産分配という限定的な目的のための法的文書ですが、エンディングノートは延命治療の希望、認知症になったときの介護方針、お葬式のスタイル、ペットの世話、デジタル遺品の処理方法など、遺言書では書ききれない様々な情報を残せます。

特に医療や介護の希望は、子供たちが最も判断に迷う部分です。意識がない状態で人工呼吸器をつけるか、胃ろうを造設するか、認知症が進んだら施設に入るか。これらは財産以上に、家族を悩ませる重大な選択なのです。

遺言書が「法律に守られた財産の設計図」なら、エンディングノートは「家族を困らせないための人生の取扱説明書」と言えるでしょう。

エンディングノートを先に書くべき3つの理由

エンディングノートを遺言書より先に書くべき理由は、大きく3つあります。

理由1:子供たちが直面する「今すぐの判断」に備えられる

遺言書が効力を発揮するのは亡くなった後ですが、エンディングノートが真価を発揮するのは生きている間、特に判断能力を失ったときです。

ある70代男性が認知症と診断されました。症状が進むにつれ、子供たちは「自宅で介護するか、施設に入ってもらうか」で意見が分かれました。長女は「父は自宅が好きだったはず」と主張し、長男は「プロに任せるべき」と反対。父親本人の希望を誰も知らなかったため、家族の関係にひびが入りました。

エンディングノートに「認知症になったら施設でプロの介護を受けたい。子供たちの生活を犠牲にしてほしくない」と書いてあれば、子供たちは迷わず決断できます。罪悪感を抱くこともなく、父親の意思を尊重できたという安心感を持てるのです。

意識を失った場合の延命治療、終末期の過ごし方、臓器提供の意思など、これらは家族が「今すぐ」答えを求められる問題です。遺言書には書けない、しかし子供たちを最も苦しめる判断だからこそ、エンディングノートが先に必要なのです。

理由2:法的制約がなく、想いまで伝えられる

遺言書は法的文書のため、感情的な内容や詳しい説明を書くことができません。「長男に自宅を相続させる」とは書けても、「なぜそう決めたのか」という理由や想いを長々とは書けないのです。

一方、エンディングノートには制約がありません。「長男には自宅を継いでほしい。子供の頃から家を大切にしてくれたから」「次男には現金を多めに。自由に人生を選んでほしい」と、判断の背景まで詳細に伝えられます。

鉛筆で書いても、消しても、何度でも書き直せます。「今日は医療のことだけ」「来週は介護の希望を書こう」と、自分のペースで進められます。完璧を目指さず、思いついたときに気軽に書き足せるのが最大の魅力です。

理由3:自分自身の情報整理が遺言書作成の土台になる

エンディングノートを書く過程は、自分の人生を棚卸しする作業です。銀行口座はいくつあるか、保険はどこに入っているか、年金の情報はどこにあるか。これらを書き出すことで、財産の全体像が見えてきます。

財産の全体像を把握せずに遺言書を書くと、書き漏れや不公平な分配になる恐れがあります。エンディングノートで情報を整理してから遺言書を作成すれば、より適切な内容になります。

さらに重要なのは、エンディングノートを書くことで「子供たちに何を伝えるべきか」が明確になることです。医療、介護、葬儀、財産と項目を埋めていく中で、「これは話しておかなければ」という気づきが生まれます。

エンディングノートは遺言書への準備体操であり、同時に家族を困らせないための最優先の備えなのです。

効果的なエンディングノートの書き方

エンディングノートを始めようと思っても、「何から書けばいいかわからない」という声をよく聞きます。家族を困らせないために優先すべき項目と、効果的な書き方をご紹介します。

最優先で書くべきは「医療・介護の希望」

基本情報や財産目録も大切ですが、最優先で書くべきは医療と介護の希望です。なぜなら、これが子供たちが最も判断に迷い、最も早く必要になる情報だからです。

具体的には次のような項目を明記しましょう。

「延命治療について」では、人工呼吸器の装着、心臓マッサージ、胃ろうの造設などについて、希望するかしないかを書きます。「意識が戻る見込みがない場合は延命治療を希望しない」など、条件も添えると子供たちが判断しやすくなります。

「認知症になったときの介護」では、自宅介護を希望するか、施設入所を希望するかを明記します。重要なのは理由も書くことです。「子供たちの生活を犠牲にしてほしくないので、施設を希望する」と書けば、子供たちは罪悪感なく決断できます。

「終末期の過ごし方」では、病院か自宅か、どんな環境で最期を迎えたいかを書きます。「好きな音楽を流してほしい」「窓から空が見える部屋がいい」など、具体的であるほど家族の助けになります。

子供たちへの想いを言葉にする

医療や介護の希望だけでなく、なぜそう考えるのか、子供たちにどうしてほしいのかを言葉にしましょう。

「私が意識を失っても、あなたたちは自分の人生を優先してください」「延命治療を断っても、それは誰のせいでもありません」「私は十分に生きました。ありがとう」。こうした言葉が、子供たちの心の重荷を軽くします。

ある家族は、父親のエンディングノートに「お前たちを責めるな。これは私の選択だ」という一文を見つけ、涙ながらに「救われた」と話していました。判断を迫られる子供たちの苦しみを想像し、先回りして安心させる言葉を残すことが大切です。

定期的な見直しと家族との共有

エンディングノートは書いて引き出しにしまうのではなく、存在を家族に伝えましょう。「もしものときはこのノートを見て」と伝えておけば、いざというとき子供たちは迷わずに済みます。

また、年に一度は見直しを行い、考えが変わったら更新しましょう。60代と80代では、医療や介護への考え方が変わることは自然です。その時々の自分の気持ちを正直に記録することが、家族への最大の思いやりになります。

遺言書へのステップアップ

医療・介護の希望を書き、財産も整理できたら、遺言書作成を検討しましょう。特に相続人が複数いる場合、不動産など分けにくい財産がある場合は、法的効力のある遺言書が必要です。

ただし、遺言書を作成した後も、エンディングノートは更新し続けてください。遺言書は財産分配の設計図ですが、エンディングノートは家族を困らせないための日々の備えだからです。

まとめ

終活というと遺言書を思い浮かべる人が多いですが、実はエンディングノートから始めることが、家族を守る最良の方法です。

ある調査によれば、親が意識を失ったり認知症になったりしたとき、子供たちの8割以上が「親の希望がわからず判断に迷った」と答えています。延命治療をするか、施設に入ってもらうか、どんな最期を望んでいたのか。答えがわからないまま決断を迫られる子供たちの苦しみは想像を絶するものです。

遺言書は財産分配という重要な役割を果たしますが、効力を発揮するのは亡くなった後です。一方、エンディングノートが真価を発揮するのは生きている間、特に判断能力を失ったときです。意識がなくなったとき、認知症が進んだとき、子供たちが「今すぐ」親の意思を知りたいと思う場面で、エンディングノートが家族を救います。

エンディングノートを先に書くべき理由は明確です。第一に、子供たちが直面する緊急の判断に備えられることです。延命治療、介護方針、終末期の過ごし方など、遺言書には書けないが家族が最も困る情報を残せます。「認知症になったら施設を希望する。子供たちの生活を犠牲にしないで」という一文が、どれほど子供たちの心を軽くするか計り知れません。

第二に、法的制約がないため、想いまで伝えられることです。遺言書は感情的な内容を書けませんが、エンディングノートなら「なぜそう決めたのか」という理由や背景を自由に記録できます。何度でも書き直せる柔軟性も、始めやすさにつながります。

第三に、自分自身の情報整理が遺言書作成の土台になることです。財産の全体像を把握し、家族状況を整理してから遺言書を作成することで、書き漏れや不公平な分配を防げます。

効果的な書き方として、最優先すべきは医療と介護の希望です。これが子供たちが最も早く、最も困る場面で必要になる情報だからです。延命治療、認知症になったときの介護方針、終末期の過ごし方を具体的に書きましょう。さらに重要なのは、なぜそう考えるのか、子供たちへの想いも言葉にすることです。「あなたたちを責めないで」「これは私の選択です」という言葉が、判断を迫られる子供たちの罪悪感を和らげます。

エンディングノートは書いて終わりではありません。存在を家族に伝え、年に一度は見直しを行いましょう。考えが変われば更新し、その時々の正直な気持ちを記録することが、家族への思いやりになります。

医療・介護の希望を書き、財産も整理できたら、遺言書作成を検討するタイミングです。相続人が複数いる場合や高額な財産がある場合は、法的効力のある遺言書が必要になります。ただし、遺言書を作成した後も、エンディングノートの更新は続けてください。両者は対立するものではなく、互いに補完し合う関係だからです。

遺言書が「財産分配の設計図」なら、エンディングノートは「家族を困らせないための愛情の記録」です。財産の話よりも先に、あなたの希望や想いを伝えることが、子供たちにとって何よりの贈り物になります。

意識を失ったとき、認知症になったとき、子供たちが困らないように。その視点を持てば、エンディングノートを今日から始める意味が見えてくるはずです。完璧を目指さず、まずは医療と介護の希望から書き始めてみませんか。それが、家族を守る終活の第一歩となります。

相続手続き、遺言書の作成・遺言の執行、 相続人・相続財産の調査 、遺産分割協議書の作成 、預貯金・株式・保険等の相続手続き、死後事務サポート(行政機関手続き等)、認知症対策(後見・家族信託等)、終活サポート(エンディングノート等)は、まかせる行政書士事務所 にご相談ください。
対応エリア:沖縄県全域(那覇市、豊見城市、浦添市、糸満市、宜野湾市、南風原町、八重瀬町、南城市、与那原町、西原町、中城村、北中城村、北谷町、沖縄市、嘉手納町、うるま市、読谷村、恩納村など)

著者 行政書士 松岡 巧
沖縄那覇相続・遺言相談窓口
沖縄県那覇市

当事務所は、沖縄の家族が笑顔で未来へ歩めるよう、「争族」をなくす相続・遺言支援を行っている事務所です。刑事として人の心に寄り添い続けた経験を活かし、安心と信頼を大切に、一人ひとりの想いを丁寧に受け止めます。
遺言書作成や相続手続きはもちろん、家族の絆を守るための話し合いにも温かく伴走。高齢者の方にも分かりやすく説明し、誰もが納得できる形で大切な財産と想いを未来へつなぐ、心を込めたサポートをお届けします。

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