遺言書と遺書の違いとは?法的効力と書き方を徹底解説

「遺言書」を書いて欲しいとお願いすると、激しく怒る方がおられます。
これは「遺言書」と「遺書」というものがごっちゃになってしまっているからです。
両者は似て非なるものです。
その違いを知って、あなたは後悔することのないようにしてください。
遺言書と遺書の基本的な違い
「遺言書」と「遺書」は響きが似ているため、同じものだと誤解されがちですが、実は全く異なる性質を持つ文書です。
最も重要な違いは法的効力の有無にあります。遺言書は民法で定められた法的文書であり、財産の分配や相続に関する指定が法的に実現されます。一方、遺書は私的な手紙に過ぎず、どれだけ真摯に書かれていても法的な効力は一切ありません。
遺言書とは、自分の死後における財産の分配方法や相続に関する意思を明確に示した法的文書です。民法で定められた厳格な方式に従って作成することで法的効力が生まれ、相続において優先的に適用されます。たとえば、特定の人に多く財産を残したい、法定相続分とは異なる分配をしたい、といった希望を法的に保証できるのです。
対して遺書とは、残された人々へ向けた感謝の気持ちや謝罪、最後のメッセージを綴った私的な手紙です。形式は完全に自由で、法律による規定はありません。そのため、遺書に財産分配について記載しても、それが法的に実現されることはないのです。
この違いを理解せずに、遺書のつもりで書いた文章が法的に無効だったり、遺言書として作成したつもりが形式不備で効力を持たなかったりするケースは少なくありません。大切な家族に自分の意思を確実に伝え、相続トラブルを防ぐためにも、両者の違いをしっかり理解することが重要です。
遺言書の特徴と作成方法
遺言書が法的効力を持つのは、民法という法律によって明確にルールが定められているためです。法定相続分よりも遺言書の内容が優先されるため、自分の意思に沿った財産分配を実現できます。
遺言書には主に3つの種類があります。
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自筆で書き、押印して作成する方式です。費用がかからず手軽に作成できる反面、形式不備により無効になるリスクがあります。全文自筆が原則ですが、財産目録のみパソコンでの作成が認められています。2020年からは法務局での保管制度も始まり、紛失や改ざんのリスクが軽減されました。
公正証書遺言は、公証役場で公証人の立会いのもと作成する方式です。法律の専門家が関与するため形式不備のリスクがなく、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配もありません。費用はかかりますが、最も確実な方法として広く利用されています。
秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま遺言書の存在だけを公証人に証明してもらう方式ですが、実務ではあまり利用されていません。
作成時の注意点として、自筆証書遺言では日付の正確な記載、署名と押印が必須です。「令和○年○月吉日」のような曖昧な日付では無効になります。また、訂正する場合も民法で定められた方法に従う必要があります。確実性を求めるなら、専門家のサポートを受けながら公正証書遺言を作成することをお勧めします。
遺書の特徴と実践的な使い分け
遺書には一般的に、家族への感謝の言葉、人生の振り返り、謝罪の気持ち、残された人々への励ましのメッセージなどが書かれます。法的な制約がないため、手書きでもパソコンで作成しても構いませんし、日付や署名がなくても問題ありません。
遺書の役割は、感情的なつながりを残すことにあります。遺言書では表現しきれない個人的な想いや、相続とは関係のない日常的な希望(葬儀の形式、ペットのことなど)を自由に記すことができます。
**実践的な使い分けとしては、法的な財産分配は遺言書で、感情的なメッセージは遺書で、と役割を分けることが効果的です。**この方法なら、遺言書で法的事項を明確にしつつ、遺書で家族への想いや感謝を温かく伝えることができます。
ただし注意点があります。遺書に財産分配について書いても法的効力はないため、必ず遺言書に記載することを忘れないでください。また、遺言書と遺書で矛盾する内容を書くと混乱を招くため、整合性を保つことが大切です。
遺言書は決して高齢者だけのものではありません。財産を持つすべての人が、元気なうちに作成を検討すべき文書です。特に次のような方には強くお勧めします。
・配偶者はおられるが子供がおられない方
・推定相続人が海外におられる方
・長男に少し多めに財産を残したい方
・不動産はあるが預貯金が少ない方
・相続トラブルを予防したい方
などです。
遺言書の作成に不安がある場合は、専門家に相談することで、確実に自分の意思を実現できる文書を作成できます。
まとめ
遺言書と遺書は、響きこそ似ていますが全く異なる文書です。
遺言書は民法で定められた法的文書であり、財産の分配や相続に関する意思を法的に実現するための手段です。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、民法で定められた方式に従って作成することで法的効力を持ちます。
一方、遺書は私的な手紙であり、感謝の気持ちや想いを伝えるためのものです。形式は自由ですが、法的な効力は一切ありません。財産分配について記載しても、それが法的に実現されることはないのです。
両者の最も重要な違いは法的効力の有無です。財産の分配を確実に実現したいなら遺言書が必須であり、気持ちを伝えたいなら遺書が適しています。併用することで、法的な効力と感情的なメッセージの両方を残すこともできます。
遺言書は元気なうちに作成しておくことが重要です。相続トラブルを防ぎ、自分の意思を確実に実現するためにも、正しい知識を持って適切な準備をしましょう。不安がある場合は専門家に相談することで、より確実に想いを形にできます。
相続手続き、遺言書の作成・遺言の執行、 相続人・相続財産の調査 、遺産分割協議書の作成 、預貯金・株式・保険等の相続手続き、死後事務サポート(行政機関手続き等)、認知症対策(後見・家族信託等)、終活サポート(エンディングノート等)は、まかせる行政書士事務所 にご相談ください。
対応エリア:沖縄県全域(那覇市、豊見城市、浦添市、糸満市、宜野湾市、南風原町、八重瀬町、南城市、与那原町、西原町、中城村、北中城村、北谷町、沖縄市、嘉手納町、うるま市、読谷村、恩納村など)








